2006年8月 4日 15:44 忘れられない思い出

私は14年間子供研修をしてきました。
忘れられない体験がいくつもあります。
その中のひとつ、今からもう6年ほど前、札幌で子供研修を行ったときのことです。
高校3年生の男の子が参加をしてくれました。
身長185cmくらいで、ずば抜けて大きい子です。
髪は茶髪、そして耳と鼻にピアス、手には沢山の指輪をつけています。
タンクトップを着て、ジーパンはダボダボでお尻が見えるくらい下げてはいています。
そんな彼が研修に参加してきてくれました。

彼は研修に参加する前、半年間ほど不登校でした。
お父さんが私の研修の参加者で、「ぜひ参加させたい」ということで参加したのです。
よく来てくれたと思います。
研修が始まっても、彼はほとんど参加しません。
端の方で一人でゲームをやったり、携帯をいじっているのです。
私が近づいていくと、彼はキッと私を睨みます。
そして、「ウザイ」という顔をし、「あっちへ行け」という仕草をし、また自分の顔を伏せてしまいます。
私だけでなく、大人が近づいていくと、必ずそうするのです。

彼がなぜそういう態度を大人に取るのか、私は彼を見て痛いほどよく分かります。
きっと彼がここ3、4年の間大人から受け取ってきたメッセージは
「それではいけない」だったり「何やってるんだ」だったり「ちゃんとしろ」「そんな格好するな」「そんなんじゃ通用しないぞ」・・・そういうメッセージばかりだったのでしょう。
彼はずっとそういうメッセージを受け取ってきたのです。
だから大人に対してすぐに抵抗し、大人を受け入れないのです。

ところが、子供研修の中で小学校1年生や2年生の子どもたちが近づいていくと、彼はにこやかに対応します。
子どもたちは怖いもの知らずです。彼に興味を持ち、関心を持って色々質問します。
「ねえ、何で髪が茶色なの?」「ねえ、何で指輪いっぱいしてるの?」
質問をされると、彼は嬉しそうに子どもに教えてあげています。
1日目、彼はほとんど研修には参加しませんでした。しかしずっと部屋の中にいました。

2日目、「来るかなぁ、来ないかもしれないなぁ」と思っていましたが、彼は時間ぎりぎりにやってきました
そして相変わらず部屋の端っこに座って、ゲームをし、携帯を触っています。
2日目の昼休みに、驚くべきことが起こりました。
彼の周りに沢山の人垣ができているのです。
そして彼は子ども達に自分のバックルや指輪について説明していました。
終始笑顔です。研修中一度も見たことがない笑顔でした。
しかし相変わらず大人が近づいていくと、彼は抵抗を示します。

子供研修の2日目の午後、親に対して感謝状を書くという時間がやってきました。
彼は恐らく感謝状を書かないのではないかと思っていましたが、なんと一生懸命感謝状を書いています。
もちろん私が近づいていっても、見せてくれません。
「え~、感謝状書いてるんだ」
私は少し驚きを禁じえませんでした。
彼は、感謝状にいっぱい何かを書いていました。

そして午後3時にご両親に部屋に入ってきてもらい、感謝状授与式が行われました。
部屋中子供たちとご父兄合わせて200人の人でいっぱいになりました。
彼の番になり、彼が出てきました。
そして彼のお父さんお母さんが彼の前に立って、向き合いました。

お父さんは180㎝くらいで大きな方ですが、お母さんは小さな方で、152、3cmくらいでしょうか。恐縮しきったような態度をし、下を向いていらっしゃいます。
子どもの前にお母さんが立っていると、お母さんは子どもの胸くらいまでしか身長がありません。
私は彼に感謝状を読んで欲しくて、マイクを向けました。
しかし、彼はなかなか読もうとしません。
読んで欲しい・・・

子供研修では、感謝状を皆の前で読んでもらいますが、中には読まない子もおり、そういう場合は強制しないようにしています。
しょうがない、やむをえない、と思いマイクを下ろそうとすると、彼がやおら片手で持っていた感謝状を両手で持ちました。
私は祈るような気持ちでした。

彼は、感謝状を両手で持ち、お母さんに対してこう言いました。一言でした。
「おふくろ、産んでくれてありがとう」
その声がシーンとした会場に響き渡りました。
あれほど沢山書いたのに、彼が読んだのはたった一言でした。
そして片手でお母さんに感謝状を渡しました。
お母さんは感謝状で顔を覆って、泣いていました。

彼の18年の人生で「おふくろ、産んでくれてありがとう」という言葉は言ったことがなかったに違いありません。
お母さんも後々言ってくれましたが、
「まさか子どもからこんな言葉をもらうなんて、夢にも思わなかった」
ということです。

その後私は東京に戻り、ご両親の了解を得て、彼に手紙を書きました。
1回目の手紙のとき、返事は来ませんでした。
2回目、手紙を出しました。返事はなかなか来ませんでしたが、ある時封筒に入った手紙が届きました。
中に一行だけこう書いてありました。
「エイロー先生へ   学校へ行くことにしました。」

その手紙は私の宝物となりました。
昨日、おとついと今年2回目のアチキッズが行われました。
沢山の子どもたちがお父さんお母さんに心からの感謝の気持ちを伝えました。
お子さんの健やかな成長を心から願います。
そしてお父さんお母さんと素晴らしい愛に満ちた家庭を作ってくれますように。
そんな思いから8月にもう一回子供研修を行います。
子供研修に参加してくれたお子さんに「ありがとう」。
そして研修を信頼し、子どもさんを送り出してくださった多くのご父兄の方に心から感謝いたします。
どうもありがとうございます。

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